2008世界選手権バイクトライアル最終戦
日本大会・関板取
二日目レポート
(エリートクラス編)

2008/08/24

バイクトライアルにとって賛否両論はあるものの,20インチ26インチ混走というエポックメイキングな年となった2008バイクトライアル世界選手権シリーズ.
20インチが有利であるという大方の予想を裏切って,ダニ・コマス選手(スペイン:MONTY26)が2戦連続して勝利し,シリーズチャンピオンに王手をかけている.

これを迎え撃つのが我らが寺井一希選手(日本:MONTY20).初戦スペイン大会では,あと一歩のところでコマス選手の後塵を拝してしまったが,必勝をかけて,マインダーである父,清氏とともに万全の体制で板取入りした.
第1セクションは,激坂下り(または上り)で例年選手を苦しめている道路横の斜面.今年はこれを一番下のBMXコースから上りきる.多くの選手がイン間際に置かれた人工の壁に跳ね返される中で,高木祐貴選手(日本:KOXX20)がこのクラスで初めて3点でアウト.
コマス選手は,終盤の斜面でリヤタイヤを滑らせ5点.
一方,寺井選手は同じポイントではラインを変えてトライし.1点でアウト,幸先の良いスタートを切った.
その後の第2〜4セクションは,沢に沿って設定されている.高低差のある滑りやすい岩々は,最高のバイクを最高のテクニックで乗りこなすことのできるライダーのみを通す厳しい設定となっていた.
点数的には大きな差にはなっていなかったが,少々緊張気味?のコマス選手に対して,愛車221KAMELを巧みに,かつパワフルに操る寺井選手のライディングにアドバンテージがあるように見えた.
そして迎えた第5セクション.
人工池の中に急勾配で設置された板の上りで,最上部の角にフロントタイヤを掛け損ねたコマス選手はそのまま池の中に落ちて,不運の5点.リヤタイヤを置いた小板から次の小板まではホイールベース以上の距離であり,一気にフロントタイヤを最上部にかけてしまう作戦が裏目に出た.

一方,このポイントを巧みなペダル掛けでクリアーした寺井選手.合計点数で8点差となり,寺井選手が圧倒的に有利な展開となるかに思われた.
しかしここからコマス選手の大逆転劇が始まることになる.第6セクションでは5点となるものの,第7,10セクションでクリーン.第8セクションでは岩の角にタイヤをヒットさせ,セクションの後半でパンクに見舞われるものの執念でアウトし,2008世界選手権2戦連続チャンピオンの強さを見せつけた.
一方,寺井選手は第9,10セクションで5点となり中盤のアドバンテージをほぼ使い切って1ラップ目が終了した.
しかし寺井ファンにとっての安心要素は,5点トライはいずれも真っ向勝負のトライで,かつ勢い余って5点となったものであり,後半戦にさらなる期待が高まった.
パンク修理のために時間を費やしたコマス選手であったが,このアクシデントがバイクトライアルファンにとって最高の演出を提供してくれることになる.当初は出走時間の違いから互いのトライを両方見ることは難しかったが,コマス選手の遅れで両者のトライがほぼ同じになったのである.
2ラップ目に入ってもコマス選手の快進撃は続く.第1〜5セクションの多くで調子の悪くない寺井選手よりも低い減点数でアウトし,勝利の女神の眼差しの方向を強引に変えてしまった.
しかし,その女神をもう1度振り向かせたのが第6セクションでの寺井選手.前半の滑る岩々を越えて,最後に巨岩を越えるアンビリーバブルな設定は,今大会ではまだ誰もアウトしていないことからも,少々やりすぎの感があった.5点となったコマス選手の後で元気なスタートを切った寺井選手.そしてその横にはストップウォッチを携えた飯塚選手の姿があった.ライバルであり,弟子であり,そして友である飯塚選手のサポートを受けて,寺井選手は2分ぎりぎりでアウトテープを横切った.
ここで流れは完全に寺井選手に変わった.先行クリーンで相手にプレッシャーをかける作戦の主導権を寺井選手がとることになる.第7〜8セクションで連続クリーンをたたき出した寺井選手に対して,連続5点に泣いたコマス選手.ほんのちょっとしたミスが招いた5点であり,そのミスがなければ全く違った展開となったと予想されるほど両者の差は僅差であった.
パワー,精度,スピードの三拍子揃った寺井選手が見せた最高の舞台での最高のパフォーマンス.そして最高の結果がついてきた.表彰台の真ん中で大きく両手を上げる寺井選手.このことが日本の,そして世界のバイクトライアルのさらなる発展に大きく貢献することを,バイクトライアルを愛する者の一人として期待する.

2008/08/31 directed by QK.


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